鼎(ゲイ)のカミングアウト・人間関係に関するコラム

ゲイ

オカマがレゲエコミュニティーに顔を出してみた結果

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先日、とある飲み屋の周年パーティーが開催された。

そのお店には何度か足を運んでいる上に、店主とは元々顔見知りだったし、あたしのことをかわいがってくれている8つ上のノンケの友人(E君)が行こうと誘ってくれたのだ。
そんなわけで顔を出してみたのだけれど、レゲエコミニュティーの界隈のメンバーと鉢合わせになってしまった。
考えてみればそのE君もレゲエが好きでレゲエコミュニティーに所属していた。あたしは一瞬どうしようって思ってしまった。

実は、レゲエコミュニティーにとって同性愛はタブーとされている。

レゲエの発祥の地でもあるジャマイカでは「ラスタファリズム」という思想があり、特にレゲエ界隈ではその影響を受けていることが多いのだが、ラスタファリズムの中では同性愛は悪とされているのだ。昔からレゲエの曲の中では同性愛者に対して攻撃的な歌も多かった。ビーニマンなどの著名なレゲエアーティストなども同性愛者に対して差別的な発言を繰り返すなどしてきた。

あたしも当然そのことは昔から知っていたんだけれど、はるか昔に一度だけレゲエクラブに足を運んだことがあった。
敢えて名前は出さないがとても有名なクラブだ。そのクラブは2012年に閉店してしまったけど、西麻布で25年も営業を続けていた老舗、と言えばレゲエ通なら誰でもわかるだろう。
二丁目で飲んでいるうちに踊りたくなって、位置的に二丁目にあるレゲエクラブOPENで踊っていたらその場で知り合ったノンケと盛り上がり、その流れでその西麻布のレゲエクラブについていってしまったのだ。場所柄OPENの客層はLGBTに対して寛容だったし、あたしも20歳を過ぎてクラブ遊びにも慣れて良い気になっていた。今思えば浅はかな行動だったと思う。

そしてそのレゲエクラブで事件は起きた。踊っているうちに、一緒に同行したゲイの友人が酔って騒ぎ始め、口調やしぐさからゲイだとばれてしまい、案の定店から締め出されたのだった。若さと酔いがもたらした過ちだった。

そんな苦い経験からあたしはレゲエコミュニティーに近寄ることを一切しなかった。触らぬ神に祟りなし。

音楽ライターをしている以上、レゲエアーティストとの接触もあったが交流は最低限にとどめた。HIP HOPとレゲエは隣りあわせの世界だし、実際あたしもダンスホールレゲエは好きなんだけれど、それがお互いの立場を守るための最善の手段だと信じていた。

そんなあたしだったが、多数のレゲエシンガーやレゲエセレクター、プロモーターに囲まれた状況で「どうしたものか」と考えてしまった。気配を消そうか、一杯だけ飲んで帰ろうか。

しかしE君は暴挙に出た。「オカマの鼎ちゃんです!」と次々と紹介し始めたのだ。一瞬でその場の空気が変わったのがわかった。
「オネエながらもHIP HOPライターをやっていて」とE君はフォローをしてくれた。
何よりE君の人柄のおかげか「まあ、E君の友達なら」と空気に変わってなんとか受け入れられた。
受け入れられた、とはちょっと違うかな。「そこに存在することを許された」という雰囲気だった。でも居心地が悪いということもなかった。前から顔見知りだったレゲエダンサーの女の子と話が弾んだのも大きかった。

「ちょっと裏来いよ」なんて言われたらどうしようと思わないでもなかったが、気付いたらHIP HOPも好きなセレクターとNORIKIYOの話などして盛り上がってしまった。酒の力というのもあったと思う。

33歳にして初めての体験だった。表面上の交流だけだし、受け入れられたとは断定できないけれども、オカマがレゲエコミュニティーで酒を飲む。そのきっかけをくれたE君に感謝しながら「ああ、時代はこんなにも変わったのかあ」としみじみ思った。

前述のビーニマンはダンスホールレゲエの王者ともいえる偉大なレゲエシンガーだが、ゲイバッシングを続けていたために物議を醸し続けていた。プロデューサーにネプチューンズ、客演にジャネット・ジャクソンを迎えて放った渾身の「Feel it boy」に関してはイギリスではLGBT団体から不買運動も起こるほどだった。そして2009年にはニュージランド公演においてLGBT団体から抗議が沸き起こり、遂に中止に追い込まれた。

そんな経験に色々思うところがあったのだろう、2012年にはインターナショナル・ゲイ・コミュニティーに今までの行動を謝罪したとされている。それまでも何回も謝罪してはすぐにゲイバッシングを繰り返していたが、それ以降はゲイバッシングの動きを見せていない。

「Shy guy」でお馴染みのレゲエシンガー:ダイアナ・キングも同じく2012年にレズビアンであることをカミングアウトした。レゲエシーンにおいてカミングアウトしたことはとても勇気の居ることだったろう。インディレーベルから今でも精力的に曲を発表している彼女だが、MVでは髪をそり落とし、のびのびと謳っている姿が見られる。

時代は変ったのかもしれない。そして今も変わっているのかもしれない。
もしかしたら、あたしたちが変えていくのかもしれない。

今回仲良くなったセレクター達のイベントは足を運んでみたいなと思った。とても勇気がいることだけれど、いつか行きたいと思った。


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