鼎(ゲイ)のライフスタイルに関するコラム

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【ゲイ文学】ぼくと彼が幸せだった頃 / クリストファー・デイヴィス

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あたしは決してゲイ文学に精通しているわけでは無いのだけれど、いくつか好きな小説がある。

クリストファー・デイヴィスの「ぼくと彼が幸せだった頃」もその一つだ。
1992年に発行されたが、今では絶版となってしまった。Amazonなどで安く手に入れることができる。
自分も古本屋で見つけて購入した口だ。
先に言っておくが、ゲイ文学と言ってもこの小説には性描写はほとんどない。
主人公の愛する人が命を削り取られていく様が描かれているだけだ。

1980年代、アメリカの同性愛者を奇病が襲った。免疫力が低下し、カボジ肉腫、カリニ肺炎などを併発しながら皆命を落としていった。その奇病は不治の病とされ、同性愛者にパニックをもたらした。それはアメリカ疾病予防管理センターによってエイズと名付けられた。著名人もどんどんエイズで亡くなっていった。そういう時代だった。

NYからほど近いファイアー・アイランドという小島にはゲイが集まる。
主人公もその一人だ。主人公はエイズを患っていた。そして主人公がどうしても忘れられない元カレのことを回想するシーンからこの物語は始まる。

元カレは自分勝手の荒くれ者で口も悪い。
「知ってるか?あいつのアナル、キャデラックが2台も入るんだぜ」と平気で他人を罵倒する。なんでこんな奴を愛してしまったんだろうと主人公は自問するも答えはでない。
でも一度、彼と別れてまた再会した時には彼は既にHIVに感染し、エイズを発症していた。少しずつ少しずつ、弱っていく最愛の人。そして弱りながらも悪態を付く元カレ。深い絶望感に襲われながらも無償の愛情を彼に注ぎ続ける主人公。しかしその彼も遂に亡くなってしまう。
想い返しながらもあの時期こそ「ぼくと彼が幸せだった頃」だったと主人公は反芻する。同性愛者の愛を描いたとても美しく、そしてとても悲しい話だ。

ありがちと言えばありがちな悲劇的な話だが、これが書かれたのは1990年代。HIVに対しての医療も進んでおらず、そして偏見にまみれた時代だった。その中でこんな小説がでたのは衝撃的だったろうと容易に想像ができる。それにしてもなんてインパクトの強いタイトルなのだろう。

あれから20年が経ち、医療も進み、今でこそHIVは死ぬ病気ではなくなった。だからといってこれ以上患者を増やしていいというわけではない。HIVの恐ろしさを読み返す度に教えてくれる。こんな悲劇を繰り返さないためにもセイファーセックスを心がけようと思わせられる。

そして何よりも愛の美しさを味わえる作品だ。弱る恋人を想う切ない気持ちが本当に美しく描かれている。中古図書で見つけた際にはぜひ読んでもらいたい。


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