あたしは見事なオープンゲイなのだが、知り合ったばかりの人にもボロっとカミングアウトしてしまう。まぁ、そこで拒否されたらそれまでの縁と思っているが、あっさり受け入れられてしまうことが殆どだ。周りに恵まれているというのもあるけれど、それだけ時代は変わったんだなぁとも思う。
そのやり取りの中で「『きのう何食べた?』読んでるよ」とよく言われることが多い。それもストレートの男性から言われるのだ。
『きのう何食べた?』は今更説明が不要なくらいファンの多い漫画だけど、漫画に縁がない人のために簡単に説明すると、中年ゲイカップルが主役の料理漫画だ。
大体のストーリーはこんな感じだ。作者のよしながふみは同人活動出身の漫画家で、BL以外にも大奥などのヒット作を描いている素晴らしい方だ。きっと「きのう何食べた?」も綿密な取材を重ねて描いているのだろう。
「当事者以外の者が描くゲイライフ」に多少の違和感はあるものの、あたしたちの日常を必死に見つめ、よしながふみなりのリアルさを以って漫画という形で表現されている。
史郎の高齢の親がカミングアウトを受け入れようとするも、ゲイとトランスジェンダーの区別がついていなかったというエピソードも手が込んでて中々だったし、主人公の史郎が周りの目が気になってゲイ同士で出かけないというのもやたらとリアリティがある。
親への金銭援助やゲイカップルにありがちな養子縁組問題などを次々と扱っていく。そして、あくまで調理シーンをメインに描いているので漫画のストーリーとしても重くなりすぎない。そして性的な描写も皆無なので誰でもとっつきやすい。
しかし実はこの作品、隔月ではあるがなんと『モーニング』(講談社)という漫画雑誌で連載されているからびっくりだ。モーニングは『宇宙兄弟』や『課長・島耕作』シリーズ、『OL進化論』など人気漫画を掲載している雑誌だ。あまりゲイライフというに興味がない人でも雑誌に掲載されているので、ついつい他の漫画のついでに読んでしまうというプロセスを生み出した。
こうして読者の方々は、ゲイライフという生き方があるということを知ってゆくのだ。
「ゲイなんて映画の中の話でしょ」、そんな意識があった人も「世の中にはこうやって生きているLGBTの人々がいる」ということを知る。そしてみんな自分らと何ら変わりのない生活を送っていることに気づかされる。
LGBTへの理解はまず知識をつけることから始まる。それを漫画というメディアを通してナチュラルに実現している『きのう何食べた?』は本当に素晴らしいと思う。ストーリーも面白く、読み終えた後は心が暖かくなる。
まだ読んだことがないという方はぜひ読んでもらいたい。
▼『きのう何食べた?』 / よしながふみ - モーニング公式サイト - モアイ
http://morning.moae.jp/lineup/24
【画像URL】
http://cdn.moae.jp/download/0001/13/90a070a0830b56e2958be5b24538fc90871c2721.jpeg?_ga=1.81252823.1196574190.1486176273
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